日経新聞は不動産市況を悪化させたいのか

本日4月18日の日経朝刊に「不動産融資 バブル以来「過熱」状態に警鐘」という記事が載っています。何やら不穏な記事ですね。不動産市況はもう危ないのでしょうか。自分なりに検証してみました。

日経新聞から引用
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不動産向け融資残高はバブル期越え

日経は日本銀行が作成した「金融システムリポート」を引用する形で以下のような記事を書いています。

  1. 銀行による不動産業向け融資がバブル期の1990年末以来の「過熱」状態にある。不動産融資残高はバブル期を超える高い水準である。
  2. 増加が目立つのが個人向けのアパートローン。アパートローンは返済期間が長期化し、残高が積み上がりやすくリスクが長期化する。
  3. 日銀は「金融経済活動全体としては、バブル期にみられたような行き過ぎた動きにはいたっていない」としているが、人口減や地方経済の地盤沈下で景気が後退すれば、リスクがより顕在化する。

この記事を読んだ人は以下のように感じるに違いありません。

  1. 銀行が不動産向け融資をどんどん増やして、あのバブル期を超える融資残高を積み上げている。
  2. バブル期の不動産融資は実態とかけ離れたもの(まさにバブル)だったから、今回のバブル越えの融資残高も危ないに違いない。
  3. 人口が減っているのにアパートローンが増えるなんて、どう考えてもアパートは作りすぎだ。
  4. 近いうちにこれらの融資が不良債権化して、また不景気になり不動産市況も悪くなるんじゃないか。

日経新聞による印象操作か!?

本当に不動産市況は危険な状態なのか確認するために、日銀の「金融システムリポート」を読んでみました。このリポートは100ページを超える大作で、金融機関の現状と課題について色々な角度から分析されていて読み物として面白いです。

リポートを読むと、日経の記事とは大分違う印象を受けます。日銀はこんな風に書いています。重要箇所を太字にしました。

「不動産業実物投資の対 GDP ⽐率」や「地価の対 GDP ⽐率」は、トレンドからの⼤幅な上⽅乖離もみられず「緑」のままであり、不動産市場の過熱感を⽰す指標に拡がりはみられない。その他関連する幅広い情報も含めて総合的に勘案すると、わが国の不動産市場全体が、バブル期のような、過度に楽観的な成⻑期待に基づく過熱状態にあるとは考えにくい。

P.33から引用

→ 不動産市場は過熱状態では無いそうです。

企業向け貸出を業種別にみると、不動産業を含む幅広い業種で貸出が増加している(図表 Ⅲ-1-5)。不動産以外の業種について規模別にみると、中⼩企業向けは、景気改善が続くもと 設備資⾦を中⼼に引き続き増加している(図表Ⅲ-1-6)。⼤企業向けは、潤沢な⼿元流動性を 背景に設備資⾦向けには⽬⽴った動きが⾒られないが、運転資⾦向けは、2018 年度⼊り後、⼤型 M&A 関連貸出が増加していることもあって伸びを⾼めている 。

P.15から引用

→ 銀行全体では、不動産業以外の幅広い業種で貸出が伸びているそうです。不動産向け融資だけがどんどん伸びているわけでは無いそうです。ちなみに、そもそも不動産融資が増えるきっかけを作ったのはマイナス金利政策を導入した日銀なんですけどね。

地域銀⾏の貸出を債務者区分別にみると、近年、正常先下位の伸び率拡⼤が⽬⽴っている (図表Ⅲ-1-10)。これは、中⼩企業のなかでも、信⽤⼒が相対的に低いミドルリスク企業向 けに貸出を増やしていることなどが背景にある。また、中⼩企業向け貸出を業種別にみると、 幅広い業種で貸出が増加している(図表Ⅲ-1-11)。不動産業の寄与が引き続き⼤きいが、電 気・ガス業、運輸・郵便業、製造業、医療・福祉業など多くの業種で貸出が伸びている。

最近の地域銀⾏は、貸家市場の調整リスクや与信の業種集中などを意識し、不動産賃貸業向け貸出を総じて慎重化させているため、中⼩企業向け貸出全体の伸び率もやや鈍化している。 ⼀⽅、⼤企業向け貸出は、採算性重視の姿勢からひと頃消極化していたが、⾜もとでは余資運⽤の⼀環として貸出の復元を図る動きもみられており、上述したように都内店貸出の伸び率が再び幾分拡⼤する⼀因となっている。こうしたなか、地域銀⾏のシンジケート・ローン残⾼も増加している(図表Ⅲ-1-12)。最近は、⼿数料収⼊の⾒込める⾃⾏アレンジ分の増加 が⽬⽴つ点が特徴である。

P.17から引用

→地銀に限っても、不動産向け融資の割合は引き続き高いが、多くの業種で融資が伸びているそうです。

不動産向け融資で問題なのは、人口減少地域のアパマン融資

では日銀は不動産向け融資の何を問題視しているのでしょうか。引き続き以下に日銀のリポートを引用します。

バブル期に⽐べると、①貸家業を営む個⼈を含め、借り⼿が幅広い投資家に分散している(バブル期は、不動産業のほか建設、ノンバンクを含む⼤⼿関連業者が借り⼿の中⼼であった)。また、②借⼊期間が⻑期であることや物件の個別性・多様性から、不良債権化する場合でも時期的にある程度分散して発⽣すると考えられる。これらは、⾦融機関の不動産貸出ポートフォリオのストレス耐性を⾼める要素である。

もっとも、①関連貸出が、全体として、中⻑期の空室増加・賃料下落といった共通リスクに晒されている点は変わらない。⼈⼝や企業数の減少、成⻑期待の低下といったバブル期とは異なるファンダメンタルズのもとで、将来の物件需要に対して過⼤投資となっていないかという点は注視してい く必要がある(図表Ⅳ-3-5)。また、②REIT や不動産ファンド向けはノンリコースが多い と、貸家業向けは中⼩企業や個⼈など必ずしも損失吸収⼒の⾼くない借り⼿の⽐重が⾼いこ とから、不動産収⼊の減少が債務返済能⼒の悪化に直結しやすい点にも留意が必要である。

P.53から引用

→ バブル期と違って借手や物件タイプが分散され、借入期間が長期なのは良い事だが、人口減、成長率低下といったファンダメンタルの変化に留意すべき。

上述の「将来の物件需要に対して過⼤投資となっていないか」という点は、⾜もとの状況 から判断することは難しい。この点を、例えば貸家業についてみると、近年の貸家の増加は 周縁地域から市街地への移住や単⾝世帯の増加等に伴って世帯数が⼤きく増加している地域 が中⼼であり、相応に実需を反映した動きとなっている。

⾦融機関貸出の⾯でも、世帯数増加地域ほど、貸出全体に占める不動産業向け、個⼈による貸家業向けのウエイトが⾼くなる 傾向が窺われる(図表Ⅳ-3-6)。もっとも、貸家の増加は、低⾦利下における⼟地所有者や富 裕層の資産運⽤・節税ニーズの⾼まりといった供給側の要因が作⽤している⾯もある。このため、個⼈による投資⽤不動産の購⼊は、⼤都市圏はもとより、成⻑期待が低く、企業数の減少や無借⾦企業の増加に直⾯する地域においても増加している。

P.54から引用

→ 世帯数が増える地域ほど不動産向け融資は増えるという当たり前の結果が見られるので、直ちに過大投資・過大融資だとは言えないが、成長期待が低い地域(≒人口が減る地方) でも不動産投資は増えているから注意が必要。

まとめ

非常に長文になってしまい恐縮ですが、客観性を確保するためにきちんと該当箇所をリポートから引用させて頂きました。

日銀のリポートを読んで私は以下のような印象を受けました。

  • 不動産向け融資残高は確かに増えているが、他の業種向け融資も増えている。不動産向け融資だけがどんどん増えているわけでは無い。→日経は不動産向け融資の増加だけを切り出して記事にしている。
  • 不動産市況に過熱感はない。→不動産は個別性が強いのでケースバイケースで判断すべき。中には高すぎる物件もあると思われる。
  • アパマン融資は長期(15年~20年)に及ぶものが少なくないので、将来の成長率や人口・企業数の動向などの賃貸需要の推移に留意すべき。→当然の指摘です。人口が減少する地方都市の不動産向け融資はリスクが高そうです。

日経は「不動産市況が危ない」と煽りたいが、日銀はそんな風に思っていないので、「融資残高がバブル期越え」という一面の事実だけを都合よく解釈して記事を書いているのではないでしょうか。

ほとんどの人は元ネタのリポートは読まないでしょうから、こうやって景況感が形成されてしまうんだなと怖さを感じました。

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